2013/12/15
政治家の法律知識の無さに絶句
先週は、石破自民党幹事長が、秘密保護法案による報道の抑制に関する発言を記者会見で行い、物議をかもしました。しかし、会見の様子をみると、単に、石破氏の法律知識不足故の混乱であることが明白です。videonewsコメンタリー その具体的内容と、その辺りの事情にまつわる問題点について書きます。
石破氏は、日本記者クラブで、神保哲生氏から、「秘密保護法では、秘密を知った記者が報道する事を罰する規定が無いが、罰せられないという解釈で良いか?」という質問を受けたのに対して、「報道する事が国家の危機につながるような場合には、報道を抑制する趣旨であると解釈する事が適切」と回答。その根拠として、「犯罪成立要件としての構成要件、違法性、責任とあるうちの、「違法性の意識」を備えている以上、犯罪の成立が検討されてしかるべき」としています。
たしかに、石破氏が犯罪の成立要件として構成要件・違法性・責任を持ち出しているのは、正しいです。しかし、重要なのは、構成要件=条文規定がなければ、違法性や責任を論ずるまでもなく、犯罪は成立しないというのが、刑法の大原則であるという事です(罪刑法定主義)。また、石破氏は、「違法性の意識」を持ち出していますが、これは犯罪の主観面を検討する「責任」の領域の問題であって、条文規定が無ければ、そもそも論ずる余地のない論点です。
そして、秘密保護法には、その条文規定において、報道機関が情報を入手する場合の規定は置いているものの、「報道」を処罰する事を定めていない以上、報道行為は罰せられないというのが、罪刑法定主義の当然の帰結です。簡単にいえば、法律に「報道」について定めが無い以上、罰する事は出来ない。以上、おしまい、の世界です。
この「罪刑法定主義」は、大学の法学部で刑法の講義を受ければ、まっさきに習う刑法の重要な原則です。石破氏は、大学法学部の先輩なので、彼が法学部の門をくぐったことは分かっています。にもかかわらず、非常に初歩的な法理解もできずに回答してしまっている事に大きな失望を覚えました。あの記者会見の様子から見て、石破氏が、わざととぼけて回答しているようには到底見えず、単純に知識が不足しているだけです。となると、元々、大学時代に勉強をさぼっていたのか、あるいは、その後の精進を怠って知識を失ってしまったのか、そのどちらかです。
そして、石破氏は、「理論派」に分類されていますから、他の国会議員の法律に対する理解のレベルを想像すると寒気を覚えます。
国会議員は、英語では、lawmaker です。日本語でも、議会は立法府ですから、議会を構成する国会議員は法律の専門家として法律を作る立場にあります。もちろん、政策の方向性が国民の意思を反映するものであるならば、国会議員自身が必ずしも法律知識に通暁している必要はありません。たとえば、法律の専門家に自分の政策実現のための具体的方法を尋ねられる環境が整っていて、それに基づく回答を行うという事でも全く構いません。問題は、法律知識を欠いた有力な国会議員が、その能力の無さに関する認識無しに回答してしまっている点です。
さらには、videonewsで報道されるまでのこの1週間、「なんとなく石破氏が報道抑制的発言をしたようだ」といった論調でしかこの問題を報道出来なかった大手マスメディアには大きな問題があります。マスメディアの追及不足が、このような国会議員の存在を許してしまっています。
国会議員が、みずから法の基本原則を学ぶか、または、専門家のアドバイスを十分に受けた上で回答できる仕組み作りが重要です。現在は、官僚がその「専門家」の役割を担っていますが、政治家は、本来、官僚をコントールしてその権力を抑制する役割を担っていますので、それでは本末転倒です。
また、政治家が法的な素養を踏まえた発言を行っているかをチェックするマスメディアの役割も非常に重要です。まずは、世論に大きな影響を及ぼす大手マスメディアにその役割を期待しますが、引き続き、videonews にも頑張って頂きたいです。さらには、私のような個人のこうした情報発信が、少しでも目に触れていくようになれば、と期待しています。