2009/1/13
ビジネス情報源としての図書館の有用性
1月4日、待ちに待った都立中央図書館の改修工事が終了し、オープンしました。早速行ってみたのですが、ビジネスパーソンにとって益々使い勝手の良い環境が整っていました。 http://www.library.metro.tokyo.jp/12/index.html
本稿では、業界情報等ビジネス情報収集のノウハウを提供しますが、その中で図書館の果たせる役割は最近特に大きくなってきています。その点にも注目しながら読んでいただけると嬉しいです。また、もっと有用な方法をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご意見をお寄せ頂けると更に嬉しいです。
ビジネス情報を収集するプロセスは、次の段階に分けられます。以下、プロセスに沿って解説します。 1.何を調べたいのかを確定する。 2.どの資料を見ればよいのかを確定する。 3.必要な資料を探す。
■何を調べたいのかを確定する。
ある企業について調査しなければならないとなったときに、意外と「何を調べたいのか」曖昧なままに、いきなり企業名をググってしまったりすることもあるかと思います。「あたり」をつけるために有効なケースもありますが、アウトプットの質は他の人と差別化できませんし、奥深い分析をすることもできません。
まずは、何のためにその企業を調査するのか、目的を明確にした上で、調査すべき対象をフレームワークで明確にします。例えば、ある企業を取り巻く環境を網羅的に知りたいという場合、フレームワークは「業界」「競合」「該当企業」となります。
■どの資料を見ればよいのかを確定する
では、「業界」について調べるにはどうしたら良いでしょうか。
まず、その企業がどの業界に属するのかを確定しなければいけません。これが不明な場合は、どうするか?
上場企業や中堅企業であれば、四季報で探してみるのが確実です。ページの隅に何の業界の会社なのかが明記されています。四季報に掲載されていない場合は、その企業のホームページを見てみるのが手っ取り早いです。
どの業界に属するか分かったとして、どの資料を見ればよいでしょうか?
この点について、最近非常に便利になったのが、国立国会図書館のサイト「産業情報ガイド」です。ここには主要な業界について、どの情報源を辿れば良いか具体的に掲載されています。一般的には、ここに掲載されている情報源をあたれば十分なケースがかなり多いのではないかと思います。 http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme/theme_keizai.html#sangyou
もしも、国立国会図書館のサイトに知りたい業界がない場合は、次の書籍が便利です。これらの書籍には、様々な業界等について、どのような情報源があるのかが記載されています。更新される資料ですし、高価なので、公共図書館で参照するのが便利です。都内であれば、都立中央図書館に行けば、開架式の書棚から自由に取り出して閲覧することができます。 ・日本能率協会総合研究所「ビジネス調査資料総覧」(年刊) ・日本能率協会総合研究所「ビジネスデータ検索事典」(不定期刊)
次に、「競合」についてです。
まず、どの企業が競合に当たるのかを特定しなければなりません。
上場企業の場合、確実な方法としては、ロイター社の会員となって、対象企業のプロフィールを見ることです。そこには競合企業が掲載されています。 https://commerce.jp.reuters.com/purchase/default.do
ただ、ロイター社の会員になるには月額1,449円のフィーがかかります。これを無料で済ませて、かなり確度の高い裏技があります。それは、日経テレコンの新聞記事で、対象企業名と業界名をAND検索する方法です。もっとも、日経テレコンはまともに使うと月額数千円プラス検索回数当たり数百円の結構高額のフィーがかかります。これをタダにするため、野村証券に口座を持つのです。すると、日経テレコンのかなりの部分を無料で利用できるようになります。ちなみに野村証券の口座は残高0円でもOKです。
以上は上場企業の競合を知りたい場合ですが、非上場の中小企業の場合は、国立国会図書館のサイトに企業・団体リスト情報というのがあります。ここで対象企業の属する業界団体が掲載されているリストを探します。 http://refsys.ndl.go.jp/keisya.nsf/Public?OpenFrameset
ただ、リストを国立国会図書館で請求するのは結構手間です。閉架式で沢山の人が請求に並んでいるため時間がかかるのです。開架式で効率的に済ませたければ、やはり、都立中央図書館です。国立国会図書館のサイトに掲載されているリストの多くは都立図書館にもあります。在庫の可否は、次のサイトで検索可能ですので、自宅にいながらにしてチェックできます。 http://catalog.library.metro.tokyo.jp/
そして業界団体が分かれば、まず、ネットで業界団体を検索してみます。そうすると会員企業が掲載されている場合が多いので、そこで競合が分かります。もしそれがダメなら業界団体に電話で問い合わせてみます。誠意を持って尋ねれば大抵親切に教えていただけます。
次に、対象企業に関する情報はどの資料を見るかです。
これには、有価証券報告書、図書情報、新聞・雑誌記事情報、社史などがあります。
■必要な資料を探す
まず、業界情報についてです。
「事実」をベースに情報を押さえようとすると、必要になるのは統計データです。最近は、ネット上でもかなりデータが掲載されるようになりました。しかしながら、公的データであっても古いものになると、まだまだネット上では貧弱で、紙データに頼らざるを得ないケースが多いです。
紙データについて、日本で出版されたすべてのデータが揃うのは、国立国会図書館です。しかしながら、先述のとおり、すべて閉架式なので結構時間を食います。しかも、永田町からかなり歩かなければ行けないロケーションにあり、ちょっとした調べ物でも1日がかりの代物になりがちです。
この点、都立図書館は開架式の図書が多いため、使い勝手が非常に良いです。過去の資料は閉架式になっていますが、国立国会図書館に比較すれば待たされる時間も短くて済みます。
次に、競合や対象企業の企業情報です。
まず、有価証券報告書です。
上場企業について、過去5年のデータであれば、金融庁のEDINETが活用できます。 http://info.edinet-fsa.go.jp/
ただ、もう少し古いデータに遡りたい場合やデータで財務データを取得したい場合は、有料ですが、日立ハイエク社の「有報革命」が便利です。 www.e-report.yuhoweb.hisco.co.jp/
無料で昔の有価証券報告書を閲覧しようと思うと、国立国会図書館に行って、冊子体「有価証券報告書総覧」またはマイクロフィルム資料「有価証券報告書」を閲覧することになります。
次に、企業の図書情報です。
意外に使えるのが、横浜市立図書館の蔵書検索サイトで、社名検索してみることです。ここで検索をかけると、書籍の目次や要旨に記載されている社名まで引っかけて来てくれます。ちなみに横浜市全域の図書館の蔵書が検索対象です。 http://www.lib.city.yokohama.jp/ なおアマゾンの書名検索は、画面トップに出版社や出版年等の基本情報が掲載されないため、私はあまり好きではありません。書店のサイトとしては老舗の紀伊国屋書店が見やすいです。 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
次に、企業の新聞・雑誌記事検索です。
これには、とりあえず、G-Searchが便利です。有料ですが、ここで、かなりの数の新聞・雑誌記事が検索でき、なおかつPDFでプリントアウトできます。 http://www.nifty.com/RXCN/
ただし、日経新聞は入っていません。日経新聞については、野村証券版日経テレコンを利用すれば、無料で過去10年分まで検索できます。また、野村証券版日経テレコンでは、企業の直近の財務データ等も検索できますので、重宝します。なお、古い日経新聞については、都立図書館に行けば10年より前に遡って日経テレコンで検索できます。
もっと徹底的に特に雑誌記事を検索しようと思うと、国立国会図書館のサイトがあります。ここでは、大学の紀要の中の論文等、かなりマニアックなものまで拾って来てくれます。実は、ここで検索してページ数等も確定できたものについては、国立国会図書館に有料で郵送を依頼することができます。ただ、その前提として会員登録が必要です。 http://porta.ndl.go.jp/portal/dt
最後に、社史です。
意外な穴場が、神奈川県立川崎図書館です。ここには14,000冊の社史が所蔵されています。川崎から20分ほど歩くのが難点なのですが、実は、神奈川県内の市立図書館で依頼すると、川崎図書館から当該市立図書館まで取り寄せてもらえます。貸出も可能です。 http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/index.html
・・・大体、以上が企業を知りたい場合の情報収集ノウハウです。外部に公開されている情報だけからでも、意外と多くの情報を引き出すことができます。