2008/3/4
亡父の一言
昨年、1月14日、父が亡くなりました(享年71歳)。
父は、照れ屋で、偉そうに大っぴらに人に何かを言って自慢するような人ではありませんでした。 むしろ、実直に生きているその姿の中に、人に感動を与える何かを持っているような、そういう人でした。 今回は、父に代わって、私が、「父の一言」を紹介させていただきます。
晩年は認知症を患っていたため、事情を慮って、父とあまり交際をしていなかった父の友人が、死後、実家に顔を出してくださるようになりました。父の友人に、30年前、シドニーで親しくさせていただいたMさんがいます。父とは別の会社でしたが、Mさんも父も、社員たった1人で、シドニーに駐在し、共に苦労を分かち合った仲です。
そんなMさんと、昨日の飲み会で、生前の父の思い出話に花が咲きました。
時は、Mさんと父が、まだシドニーに単身で行っていた頃。場末の酒場でワイン等を注文したときのことだったそうです。 当時、オーストラリアでは、日本と違って、レストランに行ってもウェイター・ウェイトレスは素っ気も無く、置いてあるフォークはヒン曲がっていて、ワイングラスにもホコリが付いているような状況でした。異国の地に単身放り出されて、すべてが揃っている日本との大きな違いに日々、やりきれなさを感じる毎日でした。
そんな状況の中、Mさんは、いつものヒン曲がったフォークを見て、つい悪口を言ったらしいのです。
それに対して、父は、言ったのです。
「かわいそうな人たちだと思いなさい」
オーストラリアは、資源大国で、何もしなくても裕福な生活を送れる。そんな恵まれた環境の中で、逆に、人としての感性が鈍ってしまう。それを父は「かわいそう」と表現したのだと思います。
思えば、父は、どんなに辛い状況になっても、決して文句を言うことなく、いつも朗らかに笑っている人でした。
亡くなって1年が経ち、なんだか、父がMさんを引き合わせてくれて、そして、大事なことをもう一度、思い出させてくれたような、そんな気がしました。